考えたことのまとめ

備忘録です

R-1グランプリ2023の感想を書きました。

R-1、ドキドキでしたね。
この時期が来ると今年も始まったなあと思います。地方勢なので地上波で見られる数少ない賞レース。ここから新しい一年が始まりますね。
さて、この度も色んな意味で世間を賑わせているRー1グランプリですが、今回も考えたことをまとめてみたいと思います。言語化に緩くお付き合いください。

 

 

ダークホース飛躍の大会、R−1グランプリ

猛者揃いのファイナリストの中、比較的メディア露出も少なめだった田津原理音さん。ラストイヤーのサツマカワRPG、Yes!アキト、各賞レースファイナリストのコットンきょん、カベポスター永見、若手大喜利覇者の寺田寛明など、本当に強い芸人がこぞりまくった中での優勝はなんとも言えない達成感がありますよね。
そう言えばR−1って初出場で優勝される方が多いなあと思いました。調べました。M−1が18回中9回(50%)、KOCが15回中9回(60%)なのに対して、R−1は21回中13回(約62%)になりました。この数字は初回大会も含まれるので厳密に言えばもう少し差があるのだろうと思います。ここからもR−1は他の賞レースより若干チャレンジがし易いのかな、と考えました。新しい芸人さんを発掘できるという意味では有意義な大会でもある、と思います。

 

 

ピンだからこその武器、フリップ芸

今回はピンネタの幅が広かった一方で、歌ネタ・リズムネタ0という異例のラインナップでした。昨年は優勝、準優勝ともに歌ネタでしたね。ピン芸人にとって強い武器じゃないかなあ、と思っていたのですが、もっと強い武器がありました。フリップです。
今回、8名中3名がフリップ芸でしたが、いずれも個性があり三者三様でしたね。その中でも際立って新しいフリップ芸の形を見せたのが田津原さんでした。
カードゲームという本来一部のファンしか分からなかったものがエンタメ化された今、ここを題材にしたのが非常に上手だと感じました。新しいエンタメを分かっている。これも一つの強みですよね。一本目、二本目ともにカードゲームのテーマは変わっていませんが、一本目はバトルゲームのカード、二本目はトレーディング用のカードと、微妙に異なるカードゲームの性質を上手く利用することができています。凄まじい着眼点ですよね。これは見ている側を完全に意識した結果かな、と思います。アイテム使いもとてもわかっていますよね。カードにもきちんとレアリティを施している芸の細かさ。デコられた硬質ケースやファイルが出てきたときは手を叩いて喜んだ方も多いのではないでしょうか。
また、カードに書かれている文言にあえて触れないことで説明くささを軽減させているのが見やすかったかなあと思います。ここも計算したのかな。だとしたらすごい。

 

 

「刺さる人に刺さる」を貫いた強さ

ふと思ったのが最終決戦で残った田津原さんとコットンきょんの対比でした。きょんがコントという分かりやすく誰でも笑える安定したネタを出してきたのに対して、分かる層が限られたカードゲームネタを貫いた田津原さん。審査もどちらを取るかで非常に悩まれたと思います。
結局軍配が上がったのは後者でしたが、ここで考えたいのが「刺さる人に刺さる、だけでなく本来刺さらない人も取り込んだ強さを持っていた」という点です。
歴代の王者は比較的「分かりやすさ」が実を結んだと思うのですが、今回は上手いこと自分の世界に見る側を取り込んだのかな、と感じています。本当にレアリティのあるカードが当たった時の表現が妙にリアルでした。この絶妙なリアリティが、本来あまり刺さらないであろう審査員の票を集めたのかな、と思います。

 

 

個人的に好きなネタ2選

①寺田寛明「ことばレビューサイト」
日本語の面白さネタ大好きなので否応なく刺さりました。付和雷同の「雷」をピックアップするのが良かったです。ステッカー交換の文言も良かったですね。一番笑ったのは「梨すき(^^)」です。過呼吸になるかと思いました。ことあるごとに使いたいですね。

②カベポスター永見「世界で一人は言っているかもしれない一言」
大喜利系ネタですね。一言一言の重みが大変心地よかったです。一番好きなのは「お仏壇の蝋燭でマシュマロ焼きなさんな」です。文末の「なさんな」が味わい深いですね。文学性が滲み出ています。最後の「君の自由研究のせいで、この街はどうなったと思う!?」も、物語性があって面白かったです。このセリフが用いられた映画かなんかが出来上がったら、教えてください。
これは個人的なツボなのですが、BGMがショパンノクターンOp.9−2なのが非常に良かったです。クラシック音楽で一番好きな曲です。ノクターンOp.9−2のノスタルジーとエモーショナルさが、永見くんの言葉の選び方やセリフの発し方と上手く噛み合っていましたね。最高です。感謝。

 


色んな評価があるけれど

R−1は色んな点から賛否両論がありますが、まずは演者さんや制作に携わった方々に感謝をお伝えできたらな、と思います。本当にお疲れ様でした、最後まで頑張ってくださり、ありがとうございます。ご自愛ください。来年はもっと良い大会になるよね、ハム太郎

 

 

「分かる」面白さについて考えました。

人はノスタルジーで生きているんですね。
懐かしいなあと思うと、当時の熱が蘇ってきて、それはもうわくわくします。
過去のことを思い出して、楽しかったことも悲しかったことも、それが今の自分を築いていることに気づくことって、誰にでもあると思うんです。

さて、すごい番組が始まりましたね。
「マヂキタ大草原」
マヂラブ野田さんと真空川北さんがMCを務め、ゲストにインターネット文化の何たるかをふわっと伝える、というような番組ですね。
インターネット文化の黎明期、ゼロ年代初頭の独特なインターネット文化にノスタルジーを感じると共に「メディアによってセンスが築かれている」というのを改めて感じました。

 

インターネット文化の共有

先日のM-1の感想でも述べた通り、特に真空のネタはインターネット文化圏のセンスで構想されているので我々20代後半~30代はドストライクなわけです。
学校から帰って即パソコンを立ち上げ、おもしろフラッシュ倉庫や2ちゃんのスレを徘徊する。今ではスマホによりインターネットはアクセスしやすく、かつ生活に根強く結びついているのですが、当時はそこまで発達しているわけでもないので、オタク趣味のひとつとして扱われてきたわけです。
当然、親にはいい顔をされませんでしたし、友達との会話に生かされるわけでもなく、閉鎖的な空間で楽しむしかなかったんですね。
閉鎖的な文化はいつしか「日本のインターネット文化」として発展していきます。だからこそ、日陰だったインターネット文化を「共有」できるのに、えらく感動しているのかもしれません。
オタク文化がメジャーになり、一億総オタク時代の現在では「共有」って当たり前のことですよね。あのネタがよかった、あの曲がぐっときた……ノスタルジーの「共有」は、何にも変え難いものです。

 

知的好奇心ましまし!

何か面白いことを見ている時、訳分からないのも面白いのですが、「分かる」面白さも非常に強力なものです。これはおそらく、知的好奇心や知識欲に根付いたものですね。
私はこの話をする時、「平成狸合戦ぽんぽこ」を出すのですが、あの作品は「分かると死ぬほど面白い」構成になっているんですよね。
歴史や美術作品などのオマージュ、パロディてんこもりなのですが、その元ネタを「分かって」いるので、夢中になるわけです。
お笑いでもそうですね。真空のネタも、元ネタを知っているか知らないかで面白いか面白くないかがきまっています。「分かっている」ことは、爆発的な面白さを生むんですね。「分かる」ことの面白さって、例えば勉強もそれに含まれますよね。分かるから面白い。面白いから、もっともっとハマりたくなる。ここらへんは人間としてわりと大切な部分じゃないかな、と思います。知的好奇心の塊みたいな人間で良かったな、と思うことは多々ありますね。生きる糧です。

 

パロディで育ってきた

さて、パロディの話が出てきましたが、パロディを面白いと感じるのは元ネタを知っていることはさることながら、自身がパロディを通じた作品を今までのメディアで見てきたことが多いかと思います。
Flash黄金期はオリジナル作品もありながら、アニメなどのパロディ作品も多くありました。
同時期に「アサメグラフ」も徘徊していたので、一層パロディに対して熱を持てていたのかもしれません。
もっと遡れば、NHKで「ハッチポッチステーション」や「むしまるQ」などのパロディを取り入れた番組をリアルタイムで見ていた世代です。むしまるQの「チョ→(E)!」がビートルズの「She Loves You」を元ネタにしたと理解した時、脳が爆発するかと思いました。完成度の高さとパロディの面白さを感じたのです。
少し脱線しますが、Q史上最もすごいのは「マッコウクジラはせんすいキング」だと思っています。アーティストのクレジットが「はい!万平連欧州旅行」なのですが、その名の通りYes、VAN HALEN、EUROPE、Journeyを見事に融合させた一曲です。違和感なく繋がれたサウンド、いつ聞いても感動します。
そこからずっとパロディものは喜んで見るのですが、幼き頃メディアから吸収したものはずっと自分の中に残っており、センスとして昇華されているなあ、と思いました。

 

無理やりまとめるか……


私たちが感動したり、面白いと思ったりするときは「分かる」ことが前提になることがあるよ、という話でした。
「分かる」ことを共有するのも、面白さを生んでいますね。
話がまとまらなくなってしまいましたが、歳をさかねても知的好奇心は大切にしていきたいものですね。分かることは、面白い。

 

HSP人間が娯楽の受け取り方を考えました。


わたくしは、自身がHSPであることを自覚しています。
HSPとはいわゆる「繊細な人間」です。細かいことは是非お調べ下さい。
よく発達障害精神疾患と並べて語られることがあるのですが、無関係ではないとはいえHSPは「疾患」ではなく、「気質」のひとつだと言われています。その気質も、一定の傾向はあるものの人によって千差万別です。
HSPの存在や評価の是非については、ここでは語ることはできないことなので、その話は置いておきますね。


さて、何故今ここにきて自分の気質を申したかといえば、「お笑いを見る」ことにおいてもこの気質を発揮してしまうことがあるからです。
某ライブの配信を見た時に、「このコンビは静かで落ち着くな」「このコンビは、漫才は面白いけど見ててちょっと疲れちゃうな」ということがありました。
私の気質としては、空気に敏感だったり、突然の大きい音が苦手だったりします。音や空気が耳や肌に刺さる、というのが妥当だと思います。
そこで別のライブでの配信で、そのコンビだけ音を小さくして見ました。すると、視聴後の疲労感が少し軽減されたのです。これは大発見です。何か賞をください!
なんてことはないのですけど、「これで楽しめるものが増えた!」と思いとてもウキウキしました。


本来、ストレスを発散したり心を癒したりするはずの娯楽で疲れるということはもやもやすることだと思います。
私の場合は音楽やお笑いが娯楽なのですが、もやもやがあると、後は何で癒されればいいの?と悩んでしまうことがありました。
特にお笑いはネタのみならず、ラジオやバラエティなど幅が広く、ファンなら全てを追わないと、という強迫観念もありました。それでは、本末転倒ですよね。それで疲れちゃって界隈を離れたこともあります。


多分、この気質ってとてもスペクトラムなものだと思います。
誰にでもあることで、それが強いか弱いか、自覚しているかしてないかの違いです。
私は気質が敏感で、尚且つそれを自覚している、ということだけです。たまたま。
しかしながら、自覚することで娯楽に対して自分で気持ちを調整しながら、楽しみ方を考えることができる、ということでもあります。
何も考えずに音楽に感動したり、ネタで笑ったり。逆に頭を使って思考、考察したり。
それで人生が豊かになるのであれば、こんなに幸せなことはないですよね。


M-1もそうで、敗復からリアタイしていましたが最後は体がボロボロでした。
それでも何度も反芻して、思考を整理して、自分なりの楽しみ方が出来たなあと思います。
感想をまとめてブログをつくり、とてもすっきりしています。
できる限り、かつ義務感を負わないで、一ファンとして娯楽を享受したいものですね。
ありがたいね〜。

 

 

M-1グランプリ2022の感想を書きました。

・はじめに

これほど狂わされた大会はなかったなあ〜なんて思いながら感想を認めます。
今回はアナザーアナザーまで追ったので、愛が深い。1回戦から決勝まで、それからPVまで、演者は勿論、M-1に関わるスタッフさんの愛もめちゃくちゃに感じたし、視聴者の入れこみ具合も深かったのではないかと思います。

 

・一回戦から三回戦

残念ながら見られる範囲でしか見てなかったのですが、なかなか激アツだったと思います。
三回戦で観音日和が上がってきた時はテンション爆上がりしました。時勢的に宗教が取り沙汰された2022年でしたね。漫才、取り分け時事漫才では新興宗教に焦点を当てるものがほとんどですが、観音日和は自身の「僧侶」を活かしつつ、宗教を毒のないクリーンなお笑いにできているのは特筆すべき点で、それが強みになったのではないかと思います。
今後もっと見たいなあと思ったのは幸せのトナリです。見た目陰キャなのに実はネアカという飯塚くんのキャラクターに惹かれますね。と思って今調べたら解散してました。残念賞!良い相方が見つかるといいですね。
個人的には数年前からナイスアマチュア賞が好きです。小中学生が漫才に挑戦して、一生懸命なのが熱くて、「そのまま育ってくれ……」と思いました。

 

ウエストランド開園

避けて通れないのがウエストランドの優勝ですね。ノーシードで1回戦からずっと出続けて優勝するのは、「初出場初優勝」「敗復からの優勝」とは一線を画して強いな、と思いました。
個人的には三回戦のネタが好きです。ストレートな毒舌漫才が基本スタイルのウエストランドですが、三回戦のネタではセンシティブな話題を出さないように努力する、一方で毒は吐くという矛盾したスタイルが新鮮で、はじめてウエストランド面白いな〜って思いました。だから、決勝行った時も納得ですよね。
実を言うと、最初は優勝に納得が行かなかったのです。悪口漫才と言う好みが分かれるスタイルで、どちらかというと、面白いと思うけど好きでは無い、と言った具合です。(これは自身の気質が関わっているのが大きい)当時の感触としては、ウエストランドがファーストラウンド後に空気を自分のものに出来ていて面白い流れを作っていた点、審査員の好みに刺さったんだろうなという点が優勝への決定打だったのではないかと感じました。加えて、2021錦鯉のシンデレラストーリーに心を奪われていたので、そういうものを期待してしまっていた、というのもあります。
ただ、吉本一強という構図から脱して、タイタン所属芸人が優勝したり決勝にいけたりした事はひとつ大きな意義があると思います。そういう意味でも、結果的に、ウエストランドが優勝して良かったなと納得することができました。
ちなみに妹もお笑いフアンなんですけど、決勝進出者を見て、「井口だけが元気」って言っていました。言い得て妙!

 

・キュウという順番
11月頃に昨年の敗復を見直してて、その時に「あ、面白い!」と思ったんですね。その後に三回戦などを見て、自分の笑いのツボを妙についてくるな、と思ったんです。基本的に、発想が斜め上をいくネタとかじわじわくる笑いが好きなので、そこにぴったりはまったんだと思います。決勝進出者が決まった時は、キュウが来たかという意外性と来て良かった安心感でいっぱいでした。もしかしたらファイナルもありうるな、とまで思いました。
リアタイしながら9番目になったらウケるな〜と思いながら見てたら本当に9番目になったのでそれだけで面白かったです。
審査員から「順番だ」と言われて納得してしまうぐらいには、完成されたネタで勝負できたのではないかなと思っています。後からインタビューなど色々見た中で、「きちんと完成させた漫才をしたい」と仰っていたので、それを貫いた姿勢に感銘を受けました。順番で影響があるのもⓂ️の醍醐味ですよね。それをこちら側も痛感した場面だったと思います。
キュウは「めっちゃええやん」と「ヨーグルト」みたいなスタイルが主だと思っていたので、今回の「〜(で)しょう☝️」でツッコミを展開するのは新鮮でした。もう、後半はいいでしょう待ちでした。
9に纏わる伝説でもしっかり爪痕を残せて、一ファンとしてはとても嬉しい限りです。このまま漫才師キュウを続けていくことをどんなに願うかわかりません。永遠に。

 

・ネタの感想
①カベポスター「大声コンテスト」
つかみの「お前の言う通り〜」がめっちゃおもしろくて、「漫才つかみおもしろランキング」があったら10位以内にはランクインすると思います。頭から終わりまで非常に安定したネタで、これが1番ならどうなっちゃうの〜⁉️という感じでした。大声でいうものをう段で終わらせるという言葉の面白さも感じましたね。何でもない時に「湯布院!」「くずゆ!」って言っちゃいますもんね。永見少年のあどけなさや身体の中心によるポージングも面白いし、浜田さんの落ち着いたツッコミもバランスが取れてて良いコンビだな、と思いました。カベポスターをもっと見ようと思いました。湯布院!

 

真空ジェシカ「シルバー人材センター」
先日のツイートでも言った通り、ネット文化圏をベースにしたネタなので若い人向けのネタだな、と思いつつ、私がそういう人間なので大ハマりのネタでした。
真空は発言のひとつひとつがパワーワードで面白いんですよね。とにかく強いんです。そして容赦ないバイオレンス。「派遣のニューウェーブ 人材智則」に死ぬほどウケました。これ、エンタの神様リアタイ世代しか分からないと思うんですけど、こういう「知る人ぞ知るネタ」を何となく上手に入れてくるのが真空の強みなんじゃないかな、と感じています。
審査員には伝わりきれないネタが多い印象でしたが、視聴者支持は厚くできたのかな、というのが現時点での体感です。

 

③オズワルド「明晰夢
敗復で二位と大差をつけて上ってきたオズワルドですが、安定さは抜群だと思います。オズワルドの良さって、畠中さんの静かな狂気とそれに翻弄される伊藤ちゃん、という構図にあると思うんですけど、今回のテーマである「明晰夢」というのがそれを更に助長させているならと感じました。いい感じに狂ってますよね。
オズワルドは数今や少ない常連組ですが、そうなると昨年と比べられてしまう、というのはあると思います。実際問題、もっといいネタあるじゃん!と思った人も少なくないんじゃないかなあと。私自身も昨年の「ビックピースじゃん〜!✌️」が強すぎて、それを引きずってしまっていたところはあります。
決勝常連になるということは、評価されているけど過度な期待もされてしまいやすい、ということを痛感しました。それもご本人方が一番感じているのではないかと思います。

 

ロングコートダディ「マラソン大会」
21年に巨人師匠や松本さんから「センターマイクにもっと寄ってほしい」的なことを言われたのを覚えていました。確かに、センターマイクがあって、コント漫才をするのでその距離感はどうやって埋められるかな、と考えていました。今回のロコディは舞台を縦に使ってきて昨年の課題をクリアしていた点に思わず拍手しました。最初のVの足つっている兎はこれか!となり面白さ倍増でした。
それにしても面白ランナーだらけで飽きない漫才でしたね。個人的には「大奥に抜かされた〜!!」が一番面白かったですね。最後の「イッショニハシルッテヤクソクシタダロ!」もきちんと最初のボケを回収出来ていたので良かったです。
あとどうてもいい事かもしれないんですけど、赤靴下の堂前くんが可愛かったです。お洒落ですね。

 

さや香「免許返納」
ツッコミとボケを入れ替えるという大胆な転換で来たな〜と思いました。前に決勝進出したときも面白かったんですけど、今まで逆になっていたことを忘れるくらい、完成度が高かったですね。スタイルが個性的だったりコント漫才が主だったりするコンビの中、ぶっちぎりの正統派しゃべくり漫才で、視聴者としては「これだよ〜!」となった方が多いかと思います。これが漫才だ!と見せつけられた、改めて認識させられました。
「おとん81?!」のに〜やんの顔がすごく面白かったです。趣旨はズレますが、に〜やんの顔っていいですよね。アナザーで俺おも枠に選ばれて「俺?!」って言う時の顔が最高でした。この時に〜やんが聴いていたのが映画ドラえもんの「世界はグーチョキパー」というのも死ぬほどツボです。最早出囃子にしてほしいですね。

 

男性ブランコ「音符運び」
前のさや香の興奮冷めやらぬ中でしたが、男性ブランコ世界をまざまざと見せつけられましたね。自分の空気に出来るのってすごいなあと素直に感心しました。それから、他のコンビにはない圧倒的な上品さが持ち味ですよね。貫禄があるのとはまた違う、これも男性ブランコにしか出来ない佇まいだと思います。
最初は「少し考えるのが必要なネタなのかな?」と思いながらも、絶妙なワードチョイスで笑かしにくるのは、男性ブランコの魔力ですよね。平井さんのあたふた加減、浦井さんの死に様、どこをとっても面白くないところはない、という感じでした。最後のフォルテッシモで浦井さんが「お前……」と言いながら頸動脈を切られ、血飛沫を上げて静かに倒れるところは涙無しには語れないことでしょう。
「ダブルあさま山荘」は知る人ぞ知るネタでしたね。後からあさま山荘河合楽器の保養所だと知って震えました。計算しつくされていますね。

 

⑦ダイヤモンド「レトロニム」
言語学では再命名をレトロニムと言うんですね。とても勉強になりました。三回戦でも確かこのネタだったかなあ、と思います。
ご本人はレトロニムを意識してネタを作った訳ではないと語っていますが、自身の体験から拾ってきた再発見という発想はとても面白くて興味深いですね。
うらみ節のように「○○もね!」「今までは××だけで良かったのに……」という野澤さんのオーラ、とても面白かったです。それに対する小野さんの「もねってやめてよォ!」も、怨念に対する怯えがあって、この漫才自体が一種のホラーやサスペンスのように感じました。犯人を詰問する名探偵のように、小野さんの後ろをうろうろする野澤さんも良かったです。
個人的には「不自然ローソン」が気に入っています。積極的に使っていきたい言葉です。今日も不自然ローソンに行ってきました。
最下位ネタはご本人もとんでもなく擦ってますね。そういう意味ではこのコンビも爪痕を残せたのではないかと思います。

 

⑧ヨネダ2000「お餅つき」
決勝に上がってきたことにただただ感謝したいです。女性コンビはハリセンボン以来ということで、その間に女性コンビ限定の「The W」が開催されるなど女性芸人に対する門戸が開かれる今日ですが、ヨネダ2000は女性コンビとしてではなく決勝に食い込める実力のあったコンビだと思っています。絶妙なじわじわワードを繰り出すヨネダ2000はとても魅力的ですね。志らく師匠が「女版ランジャタイ」と評価したのには賛否両論はあるかと思いますが、それ程、今大会きってのダークホースには違いないと感じています。
これまでのM-1でも歌ネタ中心の彼女たちですが、本番直前までBPM160を身体に刻み込んで臨んでいたのは並々ならぬこだわりを感じます。一切ブレない驚異的なリズム感覚、才能ですよね。最初、誠ちゃんが「U.S.A」を踊り出したときにそのままそれを歌うのかと思いきやまさかの「if…」を持ってきた時には度肝を抜かれました。倍テン要素を漫才に持ち込んでくるとは思いもしませんでした。これは圧倒的才能ですね。もはや漫才ではなくて音楽として評価されたい気もします。何度でも見てしまう音楽です。
「絶対に成功させようね」は私が気に入りすぎて、毎朝生きる気合いを入れるためにネコちゃんと手を合わせています。ネコちゃんは「何ですか?」という顔をしますが、付き合ってくれています。

 

⑨キュウ「全然違うもの」
特につかみもなく始める突然の会話がいいですよね。ここから我々の思考が始めさせられます。笑わせ急がないという余裕のある安心出来るスタイルですね。今「始めさせられる」とおかしな文を書きましたが、視聴者側の意識をコントロールできる凄みを持っているコンビだと思います。ややオカルトじみている表現ですが、ここからキュウの奇妙な物語が始まるわけです。
最初は清水さんがきちんとツッコんでいくのですが、途中から「いいでしょうサイボーグ」になり変わるわけです。キュウのネタでは視聴者が気づいているであろうツッコミをせずに、少しズレた、説得力のツッコミをするのが定石です。ぴろチャンの会話に対して清水さんの「あとお前……」などがそのキーワードなのですが、今回は海産物のタイミングがそれにあたります。ここからある意味ツッコミ不在の漫才へと展開しています。あまりにも「ちょっと違うもの」を欲しいあまりに清水さんは「〜でしょう」という語尾を統一しており、人間味を失って「いいでしょうサイボーグ」と化していく過程は不条理そのものです。そして視聴者側も後半はいいでしょう待ちになっており、知らぬ間にキュウの世界観に取り込まれてしまっている、という高度な技術を見せて頂きました。オチの「もういいでしょう☝️」も綺麗な着地でしたね。
それから、何事にも一切動じないぴろチャンと、じわじわ変わるなんとも言えない表情を見せる清水さんの対比とバランスも最高ですね。表情管理清水さんに虜になった方も多いのではないでしょうか。
リアタイ時は、めちゃくちゃ面白かったけどハネなかったなあと思いましたが、これは大きな間違いでした。めっちゃ笑顔になってました。じわじわくるタイプの笑いは総じてこうなりますね。みんなさんも、そうなっていたのではないでしょうか。そうですよね。そうでしょう!

 

ウエストランド「あるなしクイズ」
20年のトリを務めたウエストランドですが、今回もファーストラウンドのトリを飾り、見事優勝を果たしましたね。この感想も「皆目見当違い」と承知の上で書いています。
今回もキャッチコピーが「小市民怒涛の怒涛の叫び」。これは20年出場時と変わりないのですが、名は体を表すとはまさにこの事だな、とひしひしと感じたネタでした。ここらへんにもスタッフのこだわりを感じます。
あるなしクイズとは名ばかりで、途中から井口の悪口演説会になっているのですが、妙に納得してしまう笑いを誘えるようになるのは技術があってこそだな、と思います。ただの悪口に終わらず笑いに昇華できるのはプロとしてのなせる技ですね。河本さんの控えめな感じが井口の大暴れぶりを助長させてるのが良いですね。
アナザーを見ると、井口の生真面目さがこの漫才に集結してるな、と思いますね。真面目に悪口を吠えているのが、「小市民」とも相まって爆発的なウケに繋がったのだと思います。

 


ファイナルについては体力の限界を感じたので割愛します。ファイナルはロコディのネタが一番好きでした。堂前くん(タイムマシン)の「こんなことに私を使わないでください」がめっちゃ好きです。テンポ感がギャグマンガ日和

 

 

・まとめ
M-1は人生の縮図ですね。いい事もあれば良くないこともあるし、祝福されることもあるし、納得出来ないこともある。芸人さん達の人生がかかっているのは言うまでもありませんが、「漫才」という演芸を通して人生を考えるひとつの機会として、M-1は存在するのかもしれません。
壮大な言い方になってしまいましたが、お笑いのおかげで人生に潤いをもたらされた人間がここに一人いることをこっそり感じていただけたらな、と思います。
2023年も良いM-1になりますように。またこんど!